アメリカの金融政策が一体、何を呼び寄せるのか非常に気になります。そして又、この件に関してはアメリカ一国でけりをつけることができません。

 オバマ大統領の考えはこうです。

 「銀行はファンドで金を稼がずに銀行本来の、企業投資に回帰せよ。」

 ある意味的を得ているのですが。

 バブルがはじける最も基本的な原因は、実体経済以上に意味の無い売買が行なわれた結果、資源の価格が釣りあがったり、結果、経済活動を行なっている実体産業を圧迫して不況に陥ってしまうというところにあります。

 株の売買だけで儲けることができるのも、上場企業あってですから。

 そういう意味においては非常に的を得た規制ではあるのですが、アメリカ1国の規制に終わると、ニューヨーク証券取引場からお金が逃げただけで終わるという、アメリカにとっては最悪な結果を産む可能性もあります。

 つまり規制するなら、各国と協調したうえで行なわなければ意味がありません。

 ところが今のところ好意的な反応を示しているのはフランスぐらいのものですから、今後の動きが見逃せません。

 ところで、表題に書いた「ベニスの商人」について、ちょっとお話したいと思います。私は今回のアメリカの状況を見ていて、真っ先にシェークスピアの「ベニスの商人」を思い浮かべました。「ベニスの商人」では金貸しシャイロックが多額のお金を貸す訳ですが、もし返せない場合は保証人のアントニオの肉1ポンドを切り取る、という証文を発行します。アントニオはヴェネティア商人で、交易に出ている船が返ってきたら簡単に返せる、と請け負うのですが、船は不運にも嵐にあって帰って来ませんでした。
 話のクライマックスで、金貸しシャイロックは裁判所に訴え出て証文を盾に、昔馬鹿にされた恨みからアントニオの肉1ポンドを切り取る判決が出るように裁判官にせまります。そして、裁判所はそれを認めたのでした。
 まさにアントニオにナイフを突き立てようとしたその時、一旦は認めた裁判官が
言いました。

「待てシャイロック。確かにこの証文にはアントニオの肉1ポンドと書かれてはいるが、血については一言も書かれておらぬ。だから証文どおり肉1ポンドは切り取るがよい。だが、一滴でも血を流したらお前は重い罪になる!」

 時代劇なら桜吹雪が舞い散るところでしょうw

 結局、金貸しシャイロックは肉も金も受け取る事ができず、しかも法廷を侮辱した罪と人の命を取ろうとした罪で逮捕されてしまいます。

 大団円、と言いたいところですが、このお話には当時の世情を反映している興味深いところがあります。

 シャイロックは実は罪を犯していないのです。当時の法律上は。

 大金を貸した上、正式な証文を発行し、返済期日が過ぎて結局、お金も何も受け取る事ができないという、可愛そうなお話なのです。

 ちなみにシャイロックは作品上、明らかにユダヤ人を模して書かれています。つまるところ、「ベニスの商人」はユダヤ人蔑視の作品と言ってもいいでしょう。

 ここで問題になるのは、何故シャイロックが悪者にされたかということと、金貸し商売が低俗な風にみられる理由は何だったか?というところにあります。

 生産活動に従事せず、国に忠誠も誓わず、金の貸し借りだけで儲ける人間が悪だと見られていた訳です。当時は。

 だから正当な取引であったにもかかわらず、シャイロックがひどい目にあっても当時の観衆は拍手で応えた訳です。

 私が今回のアメリカ金融事情に「ベニスの商人」を思い浮かべた理由はここにあります。

 オバマ大統領の金融政策が一体何をもたらすのか、現時点では情報が不足していて予測しきれませんが、ひとつ気になる事があります。

 軍事費縮小、イラク撤退で軍産複合体を敵に回し、金融引き締めでユダヤ資本とギクシャクし、これは事と次第によってはオバマ大統領は無事に任期を終える事ができないかもしれません。

 今年の夏あたりに戦争をするかしないかで、彼の運命が大きく変わる・・かも。

 それでは皆さん、今夜はこのへんで。   

 
 

 

コメント

yasai
2010年1月25日7:43

本当に貴兄の指摘どおりだと思います

アミ
2010年1月25日11:40

はじめまして。
分かりやすくお話してくださり、参考になりました。

Hoarfrost
Hoarfrost
2010年1月25日12:30

アメリカは金融大国ですからね。
アホみたいな個人消費も金融あってこそ成り立つわけで、代替する業種が育ってない現状でアメリカの柱とも言える金融を規制することはあまりよろしくない結果を生むだけだと思います。

風神RED
2010年1月25日22:10

>yasai さん
>アミ さん
>Hoa さん

 コメントありがとうございます。深夜の書き散らしに一日で3件もコメントがつくとはちょっとびっくりしました。

 お礼に本文には書こうと思ったけどあえて書かなかった事をここに書いておきます。内容はオバマ氏についてです。昨年、ホワイトハウス主催のパーティーに招待されていない2組のカップルが紛れ込んでいたと言う事件がありました。しかも2件目はわざわざCIAが記者会見まで開いて暴露しました。あれはオバマ氏に対する何者かからの警告であったと思います。近づこうと思えばいつでも近づけるのだという。
 ところが、彼はそれを無視して今回の金融引き締めを発表しました。各国との協調が取られていなかったのは、何者かにばれるのを恐れて、わざと伏せていたのだろうと思います。ということは、国務省は?そのTOPは?

 これ以上は私の完全な想像の域に入るのと、余りにデリケートな問題なので書きません。

  

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